兄弟酒
 作者の崔恵童は唐の玄宗の皇女を妻にした人で、城東荘は終南山の王維の別荘近くにあった彼の別荘である。ここを訪れた弟と酒を酌み交わしながら詠んだ詩である。

崔恵童 「宴城東荘」

一月主人笑幾回  一月 主人 幾回か笑う    
相逢相値且銜杯  相逢い相値(あ)う 且(しばら)く杯を銜(ふく)まん
眼看春色如流水  眼のあたりに看る 春色 流水の如し
今日残花昨日開  今日の残花は昨日開きしなり


昔、荘子は人間は月にせいぜい四、五日しか口を開いて笑うことはないと言ったが、ここの主人である私はひと月に何回笑うであろうか。まあ、このように久しぶりに会うことができたのだからしばらくの間一杯酌み交わす値打ちはあるだろう。
目の前の春景色は流れる水のように去ってしまう。今日散りかかっている花は、昨日開いたばかりなのだが。

崔敏童 「宴城東荘」

一年始有一年春  一年 始めて有り 一年の春
百歳曽無百歳人  百歳 曽て無し 百歳の人
能向花前幾回酔  能く花前に向(おい)て 幾回か酔わん
十千沽酒莫辞貧  十千 酒を沽う 貧と辞する莫かれ


一年経てば、また次の一年の春が始まる。しかし、人の一生を百年というが実際に百歳の人があったためしはない。
花の前で酔えるのは一生で何回あることか。一万銭も使って酒を買ったのに、貧乏などと謙そんなさるな。

参考図書
 中国文学歳時記 春 黒川洋一他編 同朋舎

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